「脂っこい食事をしても、脂肪の一部を吸収せずに体外に出す薬がある」――これは実際に存在する医療用ダイエット薬、膵リパーゼ阻害薬の魅力的な仕組みです。
代表的な製品には、処方薬の ゼニカル(120mg) と、市販薬の アライ(60mg) があります。しかし、「本当に痩せるの?」「副作用は大丈夫?」と気になる方も多いはず。
この記事では、膵リパーゼ阻害薬の仕組み・効果・副作用・使用上の注意点について、エビデンスをもとにわかりやすく解説します。
60秒でわかるこの記事のポイント!
- 作用機序:膵リパーゼ(脂肪分解酵素)を阻害し、食事中の脂肪吸収を約25〜30%カット(※1)
- 製品:ゼニカル(処方薬、120mg)/アライ(市販薬、60mg、日本では要指導医薬品)(※3,4,5)
- 効果:体重は平均2〜3kg減、脂肪摂取量が多い人ほど効果が大きい(※2,4)
- 副作用:脂肪便・下痢・油漏れ・おならなどの消化器症状、脂溶性ビタミン不足(※1,3)
- まとめ:食事改善とセットなら効果あり。ただし油っこい食事が多いと副作用も強い
膵リパーゼ阻害薬とは?
仕組み
膵リパーゼは膵臓から分泌される酵素で、食事中の脂肪を分解し、小腸で吸収できる形に変える役割を持っています。
膵リパーゼ阻害薬はこの働きをブロックし、脂肪の一部を吸収させずに便として排出します。結果としてカロリー摂取量が減り、体重や内臓脂肪の減少につながります(※1,2)。
主な製品
ゼニカル(Orlistat 120mg)
- 処方薬として使用される(※3)
- 食事中の脂肪吸収を約30%ブロック(※1)
- 海外では肥満症治療の標準薬のひとつ、日本でも処方可能
- 効果:平均2〜3kgの減量、脂質異常改善(※2)
アライ(Orlistat 60mg)
- 海外では市販薬、日本では要指導医薬品として販売開始(大正製薬)(※4,5)
- 脂肪吸収を約25%カット(※4)
- 日本国内データ:
- 24週間試験で内臓脂肪面積・腹囲が減少(※4)
- 52週間試験でも継続効果あり(※4)
- 注意点:ゼニカルより効果は弱いが、副作用リスクもやや軽い
効果:どのくらい痩せるのか?
- 臨床試験では平均2〜3kgの体重減少(※1,2)
- 脂肪摂取量が多い人ほど効果的
- 内臓脂肪・腹囲の減少、血中脂質改善も確認(※4)
👉 GLP-1などと比べると効果は中程度ですが、「脂質カット」という明確な作用が特徴です。
副作用とリスク
- よくある副作用:脂肪便・下痢・油漏れ・おならに油が混ざる(※1,3)
- 栄養面の注意:脂溶性ビタミン(A・D・E・K)の吸収阻害 → サプリ補給が推奨(※1)
- 生活上の注意:高脂肪食をすると副作用が強く出やすい
👉 外出時の「油漏れ事故」リスクがあるため、初期は自宅で試すのが安心です(※6)。
ゼニカルとアライの違い(まとめ)
項目 | ゼニカル(120mg) | アライ(60mg) |
---|---|---|
分類 | 処方薬 | 市販薬(要指導医薬品、日本初) |
脂肪吸収カット率 | 約30%(※1,3) | 約25%(※4) |
効果 | 平均2〜3kg減(※2) | 2〜3kg程度(やや弱い)(※4) |
対象 | 肥満症治療 | BMI25以上の過体重者も可 |
入手方法 | 医師の処方 | 薬剤師のいる薬局(※5) |
生活習慣改善との併用がカギ
- 食事:低脂肪を心がけると副作用が軽減
- 運動:基礎代謝UPで相乗効果
- 栄養:ビタミン不足対策を意識する
👉 薬だけに頼らず、生活習慣の改善とセットでこそ効果が持続します。
詳しいまとめ
- 膵リパーゼ阻害薬は「脂肪吸収をブロック」する医療ダイエット薬
- 代表薬はゼニカル(処方薬)とアライ(市販薬)
- 減量効果は中程度(2〜3kg)だが、脂質代謝改善にもメリットあり
- 副作用は「消化器系トラブル+ビタミン不足」が中心
- 油っこい食事が多い人には有効だが、生活改善と併用が必須
参考文献
※1:Padwal R, et al. “Long-term pharmacotherapy for obesity and overweight.” Cochrane Database Syst Rev. 2004.
※2:Li Z, et al. “Meta-analysis: pharmacologic treatment of obesity.” Ann Intern Med. 2005.
※3:厚生労働省 医薬品医療機器総合機構(PMDA)「ゼニカル 添付文書」
※4:アライ製品カタログ(大正製薬)「脂肪吸収を抑える仕組みと国内臨床データ」 catalog-taisho.com
※5:アライ公式ブランドサイト(大正製薬) brand.taisho.co.jp
※6:St. Angela Clinic ブログ「新しい抗肥満薬アライが発売されますが『油漏れ事故』にご注意ください」
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の治療法や薬を推奨するものではありません。薬の使用には必ず医師の診断および指示に従ってください。健康状態や治療効果を保証するものではありません。