「血糖値を安定させて体質から改善できる薬がある」――そう聞くと、糖尿病だけでなくダイエットにも効くのでは?と思う方もいるかもしれません。
その代表が ビグアナイド系薬(メトホルミン)。
本来は2型糖尿病の治療薬ですが、近年では「インスリン抵抗性の改善」「脂肪燃焼効率の向上」などの作用から、肥満やダイエットの分野でも注目されています。
この記事では、ビグアナイド系薬の仕組み、メトホルミンの効果や副作用、そしてダイエットへの応用可能性についてわかりやすく解説します。
60秒でわかる!この記事のポイント
- 作用機序:肝臓での糖新生を抑制し、血糖値を安定化させる
- 代表薬:メトホルミン(グリコラン、メトグルコなど)
- 効果:インスリン抵抗性の改善、体重減少(特に内臓脂肪)
- 副作用:胃腸障害(下痢・吐き気)、まれに乳酸アシドーシス
- まとめ:糖尿病治療が第一目的だが、肥満やPCOS(多嚢胞性卵巣症候群)にも有効性が期待される
ビグアナイド系薬とは?
作用機序
ビグアナイド系薬(メトホルミン)は?
肝臓での糖の産生(糖新生)を抑え、筋肉や脂肪細胞での糖の取り込みを促進することで、血糖値を下げる薬です。
特徴は インスリンの分泌を促さない こと。
そのため「低血糖を起こしにくく、安全性が高い糖尿病薬」として世界中で広く使われています(※1)。
ダイエット効果と体質改善への可能性
体重減少効果
臨床研究では、平均2〜3kgの体重減少 が報告されています(※2)。
特に 内臓脂肪の減少 に効果的とされています。
インスリン抵抗性の改善
肥満やメタボの人では「インスリンが効きにくい=太りやすい体質」になっていることが多いですが、
メトホルミンはこの体質を改善し、脂肪の蓄積を抑える 効果が期待できます(※1)。
PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)への応用
海外では、PCOS女性の排卵改善や体重管理にメトホルミンが使われることもあります(※3)。
副作用とリスク
- よくある副作用:下痢・吐き気・腹部膨満感などの消化器症状
- まれに起こる副作用:乳酸アシドーシス(特に腎機能障害がある場合)
- 注意点:腎臓や肝臓に疾患がある人、アルコール摂取量が多い人には禁忌(※4)
費用
- メトホルミンは ジェネリックが豊富で安価
- 保険適用の場合、1か月で数百円〜1,000円程度
- 自由診療(ダイエット目的)では、クリニックにより月数千円〜
他の医療ダイエット薬との違い
- GLP-1受容体作動薬:強力に食欲を抑える → 減量効果は大きいが高額
- SGLT2阻害薬:糖を尿に排出する → 中程度の体重減少
- 膵リパーゼ阻害薬:脂肪の吸収をカットする → 副作用は消化器系中心
- ビグアナイド系(メトホルミン):体質を改善し、緩やかに痩せやすくする
👉 「即効性」より「体質改善」を重視する人に向いています。
詳しいまとめ
メトホルミンは世界的に最も使われている糖尿病治療薬のひとつで、肝臓での糖新生を抑え、血糖値を安定させることで体質を改善します。副作用として消化器症状はあるものの、低血糖を起こしにくく安全性が高いのが特徴です。肥満やインスリン抵抗性を改善し、平均2〜3kgの体重減少が期待でき、PCOSの女性にも有効性が報告されています。他のダイエット薬のような即効性や強力な食欲抑制作用はありませんが、「太りやすい体質そのものを改善する」という点で大きな意味を持ちます。コストも安価で続けやすいため、医師の管理下で生活習慣の改善と併用することで、長期的な健康維持とリバウンド防止に役立ちます。
参考文献
※1:日本糖尿病学会「糖尿病治療ガイドライン」
※2:UK Prospective Diabetes Study (UKPDS) Group. “Effect of intensive blood-glucose control with metformin on complications in overweight patients with type 2 diabetes.” Lancet. 1998.
※3:Morales AJ, et al. “Metformin improves menstrual cyclicity in women with polycystic ovary syndrome.” Fertil Steril. 1996.
※4:厚生労働省 医薬品医療機器総合機構(PMDA)「メトホルミン 添付文書」
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の薬の使用を推奨するものではありません。
薬の使用にあたっては必ず医師の診断を受け、指導に従ってください。
自己判断での服用は避け、生活習慣改善と組み合わせることが重要です。