副作用がない?漢方薬によるダイエット治療|体質に合わせたアプローチとは?

「食欲が抑えられない」「むくみや冷えで痩せにくい」――そんな悩みを持つ方に対して、漢方薬が治療の一助として使われることがあります。

GLP-1受容体作動薬やSGLT2阻害薬のような“直接的に体重を減らす薬”とは違い、漢方薬は体質を整えて痩せやすい状態に導くことを目的としています。
そのため即効性はありませんが、生活習慣の改善と組み合わせることで効果を発揮する場合があります。

この記事では、ダイエット治療に使われる代表的な漢方薬と、その効果や副作用についてわかりやすく解説します。


目次

60秒でわかる!この記事のポイント

  • 漢方は体質改善型の薬:即効性ではなく「痩せやすい体づくり」が目的
  • 代表処方:防風通聖散、防已黄耆湯、大柴胡湯、当帰芍薬散など
  • 追加処方:桃核承気湯、柴胡加竜骨牡蛎湯、大承気湯、桂枝加苓朮附湯
  • タイプ別の使い分け:便秘型、水太り型、ストレス型、冷え性型などに対応
  • 副作用もある:下痢・肝機能障害など。自己判断での使用は危険

漢方薬の特徴とダイエットへの考え方

漢方薬は「気・血・水」という概念に基づき、体質や不調の原因を整えることで自然に痩せやすい体を目指します。

  • 即効性より 体質改善
  • 西洋薬のように「直接的に脂肪を減らす」わけではない
  • 体質に合わなければ効果が出にくい

👉 「お守り」ではなく、生活習慣改善とセットで考えるのが前提です。


ダイエット治療に使われる代表的な漢方薬

① 防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)

  • 対象:便秘・皮下脂肪型の肥満
  • 作用:便通を促進し、代謝を高める
  • 効果:肥満症に対する保険適用あり

② 防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)

  • 対象:水太り・むくみ体質
  • 作用:利水作用(余分な水分を排出)、疲労感の改善
  • 効果:浮腫みやすい肥満に使われる

③ 大柴胡湯(だいさいことう)

  • 対象:ストレス太り・肥満傾向
  • 作用:自律神経や肝機能の調整、消化機能改善
  • 効果:便通改善や代謝改善による体重減少

④ 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)

  • 対象:冷え性、疲れやすい、むくみ体質
  • 作用:血流改善、代謝の底上げ
  • 効果:女性の冷え・水太り体質に適応

追加の代表処方

⑤ 桃核承気湯(とうかくじょうきとう)

  • 対象:便秘がちで、生理前や更年期にイライラ・のぼせがある人
  • 作用:血行を促進し、便通を改善。生理前の過食を抑える効果も期待
  • 特徴:女性特有のホルモンバランスの乱れによる体重変動に有効とされる

⑥ 柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)

  • 対象:ストレスや不眠でイライラし、過食に走ってしまう人
  • 作用:精神を安定させ、自律神経の乱れを整えることで過食を抑制
  • 特徴:直接的な減量効果は弱いが、ストレス性過食の改善に役立つ

⑦ 大承気湯(だいじょうきとう)

  • 対象:体力があり、腹部膨満・強い便秘がある人
  • 作用:強力な瀉下作用で便秘を改善し、体内の余分な熱を冷ます
  • 特徴:体力がある人向け。体力がない人には適さない

⑧ 桂枝加苓朮附湯(けいしかりょうじゅつぶとう)

  • 対象:冷え性でむくみやすく、関節痛を伴う人
  • 作用:体を温め、水分代謝を改善することで冷えやむくみを和らげる
  • 特徴:冷えを伴う肥満や関節痛のある体質に適応

体質別:ダイエットで使われる代表的な漢方薬と特徴

1. 便秘・皮下脂肪がつきやすい「実証タイプ」

代表薬:防風通聖散、桃核承気湯、大承気湯

  • 体質の特徴
    ・体格がしっかりしていてお腹に脂肪がつきやすい
    ・便秘傾向が強い
    ・血流が悪く、のぼせやイライラを伴うことも
  • おすすめ処方
    • 防風通聖散:肥満症治療に保険適用。便通改善+代謝促進
    • 桃核承気湯:血行不良やホルモンバランスの乱れによる便秘・過食に
    • 大承気湯:体力があり、強い便秘・腹部膨満がある人向け(強力な瀉下作用)

👉 便秘や下腹部肥満を伴う「エネルギー過剰タイプ」に適する処方。


2. 水太り・むくみやすい「水滞タイプ」

代表薬:防已黄耆湯、当帰芍薬散、桂枝加苓朮附湯

  • 体質の特徴
    ・全身がむくみやすい
    ・体が重だるい
    ・冷え性や貧血傾向を伴うことも
  • おすすめ処方
    • 防已黄耆湯:水分代謝改善、疲労感や関節痛も改善
    • 当帰芍薬散:冷え・むくみ・貧血傾向の女性に
    • 桂枝加苓朮附湯:冷えと関節痛を伴うむくみに

👉 「余分な水分をため込みやすい体質」を改善して、体を軽くするアプローチ。


3. ストレス・過食に悩む「肝気うっ滞タイプ」

代表薬:大柴胡湯、柴胡加竜骨牡蛎湯

  • 体質の特徴
    ・イライラやストレスで食べすぎる
    ・不眠や動悸を伴うことがある
    ・胸や脇が張るような不快感を感じやすい
  • おすすめ処方
    • 大柴胡湯:自律神経や肝機能を調整し、ストレス性の肥満に
    • 柴胡加竜骨牡蛎湯:ストレス・不眠・イライラが強く過食に走る人に

👉 「精神的な不安定さから食欲コントロールが効かない人」に適する処方。


4. 冷え性・代謝が落ちている「気虚タイプ」

代表薬:当帰芍薬散、桂枝加苓朮附湯

  • 体質の特徴
    ・冷え性で疲れやすい
    ・代謝が落ちて太りやすい
    ・むくみや月経不順を伴うことも
  • おすすめ処方
    • 当帰芍薬散:血流改善、女性の冷え性・月経不順に
    • 桂枝加苓朮附湯:体を温めながら水分代謝を整える

👉 「代謝が弱く冷えやむくみが原因で太る人」に適する処方。


タイプ別まとめ

漢方薬は「便秘型」「水太り型」「ストレス型」「冷え性型」といった体質ごとに処方が異なります。

  • 便秘+下腹部肥満 → 防風通聖散・桃核承気湯・大承気湯
  • むくみ+冷え → 防已黄耆湯・当帰芍薬散・桂枝加苓朮附湯
  • ストレス過食 → 大柴胡湯・柴胡加竜骨牡蛎湯
  • 冷え+代謝低下 → 当帰芍薬散・桂枝加苓朮附湯

👉 「どの漢方が合うか」は自己判断では難しく、必ず医師に体質を診てもらう必要があります。

効果とエビデンス

  • 一部の漢方薬(防風通聖散など)は肥満症治療として保険適用されています(※1)。
  • 臨床試験では、体重や腹囲の減少に有効性が報告されている例もあります(※2)。
  • ただし西洋薬と比べるとエビデンスは限定的で、効果は「体質に合った場合に限る」点に注意が必要です。

副作用と注意点

  • 防風通聖散:下痢、腹痛、動悸
  • 防已黄耆湯:発疹、肝機能障害
  • 大柴胡湯:吐き気、食欲不振

👉 漢方薬は「自然だから安全」とは限りません。
体質に合わないと逆効果になることもあり、必ず医師の診断のもとで処方を受けることが重要です。


詳しいまとめ

漢方薬は、中枢神経に直接作用するサノレックスや、糖や脂肪の吸収を抑える西洋薬とは異なり、体質に合わせて痩せやすい状態へ導く薬です。便秘がちで下腹部肥満を伴う人には防風通聖散や桃核承気湯、強い便秘には大承気湯が使われます。むくみや冷えが目立つ人には防已黄耆湯や当帰芍薬散、桂枝加苓朮附湯が適しており、ストレスや自律神経の乱れで過食に走る人には大柴胡湯や柴胡加竜骨牡蛎湯が用いられます。つまり、漢方薬は「便秘型」「水太り型」「ストレス型」「冷え性型」といった体質ごとに選択され、生活習慣の改善と併用することで効果を発揮します。効果が現れるまでには時間がかかりますが、体質に合えば代謝改善や体重減少に役立ちます。ただし、体質に合わない処方は逆効果や副作用を招く可能性があるため、必ず医師の診断のもとで適切に選ぶことが重要です。


参考文献

※1:厚生労働省 保険適用医薬品リスト(防風通聖散)
※2:Hioki C, et al. “Effects of bofutsushosan in obese Japanese women with impaired glucose tolerance.” Diabetes Res Clin Pract. 2004.
※3:日本東洋医学会「漢方と肥満症治療」


免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の薬の使用を推奨するものではありません。
薬の使用にあたっては必ず医師の診断を受け、指導に従ってください。
自己判断での使用や長期服用は副作用リスクを伴うため避けてください。

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