「最近、風邪をひきやすい」「疲れが抜けない」「肌の調子が悪い」——
その原因、もしかすると“免疫の材料不足”かもしれません。
免疫を整えるには、ただビタミンを摂るだけでは不十分。
実は、免疫細胞も酵素もホルモンも、すべて栄養素から作られています。
この記事では、免疫を支える栄養素を
- 体の材料(たんぱく質・EAA・グルタミン)
- 免疫を動かすビタミン群
- バランスを守るミネラル・抗酸化成分
- 腸内環境を整える要素
の4つの柱で体系的に整理します。
食事・サプリ・腸活を「点」ではなく「線」で理解できる、免疫栄養の全体マップです。
免疫の基礎については以下の記事を参考!

60秒でわかる!この記事のポイント
- 免疫の土台は「たんぱく質」
- EAAとグルタミンが免疫細胞のエネルギー源になる
- ビタミンA・C・D・E・B群が免疫の“潤滑油”
- 亜鉛・鉄・セレンは免疫の“司令塔”
- 抗酸化・抗炎症(ビタミンE・オメガ3・ポリフェノール)がバランスを保つ
- 腸活が免疫全体の7割を左右する
- NAC・エキナセア・エルダーベリーは“攻めの栄養サポート”
免疫力を支える栄養の基本(たんぱく質・EAA・グルタミン)
免疫を語るうえで最も重要なのが「体の材料」となる栄養素です。
免疫細胞も、酵素も、抗体も、すべてたんぱく質から作られています。
たんぱく質(Protein)
免疫細胞・酵素・ホルモンの構成成分。
不足すると、抗体(IgG・IgA)や白血球の産生が低下し、感染防御力が落ちます。
また、体内での栄養素輸送や代謝にも欠かせません。
ポイント:
- 1日体重×1.0〜1.2gを目安に摂取
- 鶏肉・魚・卵・乳製品・大豆製品などをバランスよく
💡「免疫=筋肉」と言われるほど、たんぱく質は基礎免疫の源。
必須アミノ酸(EAA)
9種類のEAA(ロイシン・リジン・メチオニンなど)は、免疫細胞の構築やサイトカイン調整に関与。
特にリジン・メチオニン・ヒスチジンは、抗体合成や炎症抑制に関わります。
ポイント:
- EAAは体内で作れない → 食事から摂る
- 肉・魚・卵・大豆を中心に
- 不足すると「免疫反応が鈍くなる」傾向がある
グルタミン(Glutamine)
条件付き必須アミノ酸。
免疫細胞(リンパ球・マクロファージ)のエネルギー源として働き、腸粘膜を保護して感染を防ぎます。
ポイント:
- ストレス・運動・感染症で消費量が急増
- 食品:鶏肉、卵、豆腐、キャベツ
- サプリ摂取なら1日5〜10gが目安
💡腸内免疫を守る「壁の修復材」的存在。
免疫細胞を動かす主要ビタミン群
免疫細胞はたんぱく質で作られていますが、その働きを支えるのがビタミン群です。
特にビタミンA・C・D・E・B群は「免疫五大ビタミン」と呼ばれ、防御・修復・抗酸化の3つの軸で働きます。
ビタミンA:粘膜バリアを守る
働き
- 鼻・喉・腸などの粘膜を健康に保つ
- 外敵の侵入を防ぐ「第一の防衛ライン」
- 免疫細胞の分化・成熟を助ける
不足すると
- 風邪をひきやすくなる
- 目や喉の乾燥、皮膚の炎症
多く含む食品
レバー、うなぎ、卵黄、にんじん、かぼちゃ、ほうれん草
βカロテン(プロビタミンA)は体内で必要量だけビタミンAに変換されるため安全。
ビタミンC:白血球の活動をサポート
働き
- 抗酸化作用で免疫細胞を守る
- 白血球(好中球)の活動を活性化
- コラーゲン合成を助け、粘膜バリアを強化
不足すると
- 感染に対する抵抗力低下
- 傷の治りが遅い
多く含む食品
キウイ、ブロッコリー、パプリカ、柑橘類、いちご
💡ビタミンCはストレス時に大量消費される。ストレス社会では慢性不足になりやすい。
ビタミンD:免疫の「スイッチ」
働き
- 免疫細胞(T細胞)の活性化
- 炎症性サイトカインを抑制
- 呼吸器感染のリスクを低下させる研究も
不足すると
- 感染症リスク上昇
- 慢性的な疲労感
多く含む食品
鮭、さんま、卵黄、きのこ類
💡日光浴で合成されるが、日焼け止め・屋内生活で不足しやすい。冬季は特に注意。
ビタミンE:細胞膜を守る抗酸化ビタミン
働き
- 活性酸素から細胞を守る
- 免疫細胞の機能低下を防ぐ
- ビタミンCと協力して抗酸化ネットワークを形成
多く含む食品
アーモンド、アボカド、オリーブオイル、かぼちゃ、ツナ
💡抗酸化ビタミンの中でも「脂溶性」で細胞膜レベルを守る重要栄養素。
ビタミンB群:エネルギー代謝と免疫細胞の合成に必須
働き
- 代謝を活発化し、免疫細胞の合成を支える
- ストレスホルモン(コルチゾール)の抑制にも関与
多く含む食品
豚肉、卵、納豆、レバー、玄米、バナナ
💡B群はセットで働くため、「総合的に摂る」のがポイント。
体を守るミネラルの力(亜鉛・鉄・セレン)
ミネラルは必要量こそ微量ですが、免疫機能に圧倒的な影響力を持つ重要栄養素です。特に、亜鉛・鉄・セレンは免疫三大ミネラルとも言われています。
亜鉛(Zinc) ― 免疫細胞の司令塔
働き
- 免疫細胞(T細胞)の生成・分化をサポート
- 抗体の産生に必要
- 味覚や皮膚粘膜の機能を維持
不足すると
- 風邪をひきやすい
- 傷の治りが遅くなる
- 味覚障害・食欲低下
多く含む食品
牡蠣、牛赤身肉、卵、チーズ、納豆、かぼちゃの種
✅ 日本人は慢性的な亜鉛不足が多いとされる。
鉄(Iron) ― 酸素供給と免疫を支える
働き
- ヘモグロビンの材料(酸素供給を担う)
- 免疫細胞の増殖や抗体生成に関与
- 体内エネルギー(ATP)生成にも重要
不足すると
- 貧血だけでなく免疫力低下
- 息切れ・動悸・疲労
- 冷えや集中力の低下
多く含む食品
赤身肉、レバー、あさり、ひじき、卵
✅ 特に女性は不足しやすいので注意。
セレン(Selenium) ― 抗酸化・抗ウイルスの要
働き
- 強力な抗酸化酵素「グルタチオンペルオキシダーゼ」を構成
- 免疫バランスを整え、感染防御に関与
- 甲状腺ホルモン代謝にも必要
不足すると
- 免疫力の低下
- ウイルス耐性の低下を招く報告あり
- 慢性疲労・甲状腺機能の低下
多く含む食品
卵、ツナ缶、玄米、肉類、ブラジルナッツ
✅ 玄米を食べる人は自然に摂れるが、精製米中心だと不足しやすい。
抗炎症・抗酸化に効く栄養素(ビタミンE・オメガ3・ポリフェノール)
免疫は「上げる」だけでなく、過剰な炎症を抑えることも重要です。
ここでカギとなるのが、抗酸化・抗炎症作用を持つ栄養素です。
ビタミンE ― 細胞を守る“盾”の役割
上項参照
オメガ3脂肪酸(EPA・DHA) ― 炎症を鎮める脂質
働き
- 免疫反応を穏やかに制御(抗炎症性サイトカイン促進)
- 細胞膜の柔軟性を保つ
- 心血管・脳の健康維持にも有用
不足すると
- 炎症が長引く
- アレルギーや関節痛の悪化
多く含む食品
青魚(さば・いわし・さんま)、亜麻仁油、チアシード
💡現代人はオメガ6過多(揚げ物・加工油)で炎症体質になりやすい。魚油でバランスを取るのが基本。
ポリフェノール ― 抗酸化&免疫調整の“裏方”
働き
- 抗酸化・抗炎症・抗ウイルス作用
- 腸内細菌のエサになり、免疫調整にも関与
- 血流改善による酸素供給サポート
代表成分と食品例
| 成分 | 主な食品 | 特徴 |
|---|---|---|
| カテキン | 緑茶 | 抗ウイルス作用・口腔内抗菌 |
| クルクミン | ターメリック(ウコン) | 抗炎症作用・肝機能サポート |
| ケルセチン | 玉ねぎ・ブロッコリー | 抗酸化・ヒスタミン抑制 |
| アントシアニン | ベリー類 | 血流促進・抗酸化 |
✅ 「抗酸化×抗炎症」は免疫を“整える”上で最も重要な組み合わせ。
腸から免疫を整える栄養素(乳酸菌・発酵食品・βグルカン)
免疫を語るうえで絶対に外せないのが腸内環境です。
その理由はとてもシンプルで、免疫細胞の約70%は腸に存在すると言われているからです。
腸は「最大の免疫器官」とも呼ばれています。
乳酸菌・ビフィズス菌(Probiotics)
腸内細菌のバランスを整え、免疫細胞の働きを活性化
働き
- 腸内フローラを整え、善玉菌を増やす
- 腸粘膜の防御力を高める
- IgA抗体の分泌を促進し、感染防御をサポート
食品例
ヨーグルト、キムチ、納豆、味噌、ぬか漬け、ザワークラウト
✅ 腸活=免疫対策の第一歩。まず発酵食品を増やすこと。
プレバイオティクス(腸内細菌のエサ)
善玉菌を増やすために必要なのが「エサ」となる食物繊維・オリゴ糖。
働き
- 腸内発酵を促進し、短鎖脂肪酸(酪酸)を増やす
- 炎症を抑え、腸粘膜を強化
- 免疫の過剰反応を抑える
食品例
バナナ、玉ねぎ、オートミール、海藻、さつまいも、豆類
β-グルカン(免疫活性多糖類)
働き
- マクロファージ・NK細胞を活性化
- 免疫バランスを整える機能が研究で報告
- 感染予防・抗腫瘍作用との関連も研究中
食品例
きのこ(舞茸・しいたけ・エリンギ)、オーツ麦、酵母
✅ 「きのこを食べる人は風邪をひきにくい」は理にかなっている。
最新研究で注目の免疫栄養素(NAC・エキナセア・エルダーベリー)
従来の栄養学に加え、近年の研究で「免疫サポートに有望」とされる成分がいくつか注目されています。その中でも信頼性のあるデータが多く、実用性が高いのが次の3つです。
NAC(N-アセチルシステイン)
働き
- 体内でグルタチオンに変換される抗酸化アミノ酸
- 呼吸器の粘液を溶かしやすくし、痰を減らす作用がある
- 免疫細胞を酸化ストレスから守る
注目ポイント
- 欧米では去痰薬として医療現場で使用されている
- 呼吸器系の健康サポートとして幅広く研究あり
食品
食品中には含まれず、摂取は基本的にサプリのみ
※グルタチオンの材料として、たんぱく質食品を摂ることも重要
エキナセア(Echinacea)
分類:ハーブ(キク科)
働き
- 免疫細胞の活性サポート
- 風邪・上気道炎の症状軽減期間を短縮する研究あり
- 抗炎症作用も持つ
使われ方
- 海外で「天然の免疫ハーブ」として有名
- 予防や初期対応の目的で使用されることが多い
注意
- キク科アレルギーの人は注意
- 長期連続の使用は推奨されないことが多い(周期利用向け)
エルダーベリー(Elderberry)
分類:ベリー系植物(ニワトコ属)
働き
- 抗ウイルス作用が報告されている天然ポリフェノール
- 風邪・インフルエンザの症状緩和に関する研究あり
- 抗酸化・抗炎症・免疫調整作用
食品
- 海外ではシロップやキャンディとして人気
- ビタミンCと一緒に使われることが多い
✅ この3つは「一般食品だけでは補いにくい栄養強化領域」に使われることが多く、
“攻めの免疫対策”に使われる栄養素として注目されています。
8. 食事で免疫力を上げる実践メニュー例
免疫はサプリより食事が基本です。ここでは「今日から真似できる」免疫栄養食の実践例を紹介します。
✅ 免疫食の基本ルール
| 目的 | 栄養の考え方 |
|---|---|
| 免疫細胞の材料 | たんぱく質・EAA |
| 粘膜防御 | ビタミンA・亜鉛 |
| 抗酸化 | ビタミンC・E・セレン |
| 抗炎症 | オメガ3脂肪酸 |
| 腸内環境 | 食物繊維・乳酸菌・発酵食品 |
| 追加ブースト | NAC・βグルカン・ハーブ類 |
まとめ:免疫は「上げる」より「整える」
免疫を支える栄養は、単体で働くわけではありません。
たんぱく質が“体の材料”となり、ビタミン・ミネラルが“働きを支え”、
腸内環境が“司令塔”として全体を整えます。
つまり、どれかひとつではなく「全体のつながり」を意識することが大切。
「免疫が落ちた」と感じたときこそ、
まずは食事バランス・睡眠・ストレス・腸の状態を見直すことが、
最も確実で持続的な免疫ケアになります。
参考文献
- Calder PC. Nutrition, immunity and COVID-19. BMJ Nutrition, 2020.
- Gombart AF, Pierre A, Maggini S. A Review of Micronutrients and the Immune System. Nutrients, 2020.
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「免疫機能の仕組み」
- 日本人の食事摂取基準(2025年版)
免責事項
本記事は一般的な栄養情報に基づいて作成しています。
疾患の診断・治療・予防を目的とするものではありません。
持病や服薬のある方、体調に不安がある場合は、医師・薬剤師など専門家へご相談ください。







