「腸活=風邪が治る」は言い過ぎ
「腸活すると風邪ひかなくなる!」みたいな話、SNSだとよく見ます。
でも正直、そこまで単純じゃない。
免疫って、睡眠・ストレス・栄養・運動・持病・年齢とか全部の影響を受ける“総合競技”なんですよね。
ただし、腸はその総合競技の中でかなり重要な場所。腸には免疫の仕組みが集まっていて、腸内細菌や食事の影響も受けます(=やれることは確かにある)。
この記事では「腸活と免疫の関係」を盛らずに、腸管免疫の全体像と、食事でできる現実的な打ち手をまとめます。

60秒でわかるこの記事のポイント!
- 腸には**腸管免疫(GALTなど)**があり、外から入るものを見張りつつ、過剰反応もしないよう調整している
- 腸の守りの主役の1つが分泌型IgA(sIgA)。病原体や毒素が粘膜に近づくのをブロックする(immune exclusion)
- 食物繊維→腸内細菌→**短鎖脂肪酸(SCFA)**が作られ、免疫(特にT細胞など)に影響しうる
- 発酵食品を増やす食事介入で、**腸内細菌多様性↑・炎症関連マーカー↓**が報告された試験もある(ただし万能ではない)
- 「腸内細菌で免疫が全部決まる」は言い過ぎ。できることはあるけど、効果は“平均すると小さめ〜中くらい”で個人差が大きい
腸管免疫とは
腸は、食べ物・細菌・ウイルスなど、外界由来のものが大量に通る場所。
だから腸には、見張り(防御)とスルー(寛容)を両立する免疫の仕組みがあります。腸管関連リンパ組織(GALT)はその中心で、パイエル板などが含まれます。
ざっくり図解(イメージ)

- バリア(腸上皮)はただの壁じゃなく、腸内細菌や免疫細胞と相互作用して免疫のバランスを作る、と整理されています。
- M細胞は腸の中の情報(抗原)をGALTに届ける役割がある、という解説があります。
- 分泌型IgA(sIgA)は、病原体や抗原が上皮にくっつくのを防いだり、粘液に絡めて排出を助けたりする“最前線の守り”です。
腸内環境が乱れると何が起きる?
ここで言う「腸内環境が乱れる」は、ざっくり 菌のバランス(dysbiosis)やバリア機能の乱れ、免疫反応の偏りが絡む状態のこと。
起きうることは大きく3つです。
1) バリアの“調整力”が落ちる
腸のバリア(粘液+上皮+タイトジャンクション)は、免疫と強く連動していて、乱れると炎症性の病態に関与しうる…というレビューがあります。
2) 「守る」と「寛容」のバランスが崩れる
免疫は強ければいいわけじゃなく、やりすぎると炎症、弱すぎると感染に不利。
腸はこのバランスを日々やってる場所なので、崩れると体感としては「胃腸が荒れやすい」「食べ物で調子が揺れる」みたいに出ることがあります(※ただし原因は腸だけとは限りません)。
3) 腸内細菌の“代謝産物”が減って、免疫調整がズレる
食物繊維などが発酵されてできる**短鎖脂肪酸(SCFA)**は、免疫細胞(T細胞など)に作用しうることが、多数のレビューで整理されています。
食事でできること(食物繊維・発酵食品・栄養)
ここからは「今日からやれる」話。
ただし前提として、免疫は総合競技なので、食事だけで無双はしません。でも土台は作れます。
1) 食物繊維:腸内細菌の“燃料”を入れる
食物繊維は小腸で消化されにくく、大腸で腸内細菌に使われやすい。結果としてSCFAなどが増え、免疫やバリアに関係する可能性が語られています。
現実的なコツ
- いきなり増やすと張る人がいるので、少量→段階(特にお腹弱い人)
- まずは「毎日入れられる繊維源」を2〜3個作る(オーツ、海藻、豆類を少量から等)

2) 発酵食品:合う人にはプラス、合わない人もいる
発酵食品を増やす食事介入で、腸内細菌の多様性が増えて炎症関連マーカーが下がった、という試験報告があります(10週間介入など)。
ただし、発酵食品は「腸に良い」で一括りにすると事故ります。
お腹が弱い人は、種類・量・頻度で普通に合わないことがある。
試し方(失敗しない型)
- 1種類だけ
- 小さじ〜小鉢から
- まずは隔日、食後に
- 下痢・張りが出たら「増やす」じゃなく「戻す」

3) 栄養:免疫は“材料不足”だと回らない
腸活の話でも、最後はここに戻ります。
- たんぱく質:抗体や免疫細胞も材料が必要
- ビタミン・ミネラル:欠乏があると免疫機能に影響しうる(例:ビタミンDは呼吸器感染の予防効果を検討した大規模レビューが複数あるが、効果は小さめ・条件次第という整理もある)
「免疫力を上げる食品」より、まずは
**不足を作らない(栄養の穴を塞ぐ)**が現実的に効きます。

FAQ
Q. 腸活と免疫の仕組みって結局なに?
A. 腸にはGALT(パイエル板など)を中心にした腸管免疫があり、M細胞による抗原取り込み、sIgAによる防御、上皮バリアとの相互作用などで「守る/寛容」のバランスを取っています。
Q. 風邪予防に腸内環境はどこまで関係ある?
A. “関係はある可能性”はあるけど、万能ではありません。例えばプロバイオティクスが上気道感染(いわゆる風邪など)の発生を減らす可能性を示すコクランレビューはありますが、菌株や条件で差が大きいです。
Q. 腸内細菌で免疫が全部決まるって本当?
A. 言い過ぎです。腸内細菌は免疫に影響しうる(SCFAなど)一方で、睡眠・ストレス・栄養状態・持病などの影響も大きい。腸は“重要な要素のひとつ”として捉えるのが安全です。
Q. 何を食べれば「免疫力が上がる」?
A. 単品より、①食物繊維の土台、②合う範囲で発酵食品、③たんぱく質+不足しやすい栄養素の穴埋め、の順が再現性高いです。
Q. お腹が弱くて、食物繊維や発酵食品で悪化する
A. その場合は「増量」じゃなく「調整」が必要。少量・段階・種類固定で、症状が出たら戻す。別記事の“お腹が弱い人向け腸活(IBS/FODMAP方向)”の手順がそのまま使えます。

まとめ
腸活と免疫は関係があります。ただし「腸活すれば風邪が治る」「免疫が爆上がりする」みたいな話は盛りすぎです。免疫は総合競技で、腸はその中の重要な競技場のひとつ、というのが一番フェアな見方です。
腸には腸管免疫(GALT)があり、パイエル板やM細胞が腸の中の情報を拾って免疫に伝え、分泌型IgAが粘膜の最前線で侵入を防ぐ、といった仕組みが組み合わさっています。腸上皮バリアも免疫と強く連動し、ただの壁ではなく“調整装置”として働く、という整理があります。
食事でできることは、派手さはないけど確実にあります。
食物繊維で腸内細菌の燃料を入れ、短鎖脂肪酸(SCFA)などの代謝産物が増える方向に寄せる。発酵食品は合う人にはプラスだが、合わない人もいるので少量・間隔で試す。栄養は「免疫を上げる」より「不足を作らない」が土台。こういう“地味だけど強い設計”が、腸活×免疫の現実的な最適解です。
参考文献
※1 Human gut-associated lymphoid tissues (GALT). Trends in Immunology. 2021.
※2 Peyer Patches. StatPearls (NCBI Bookshelf). 2023.
※3 Intestinal M cells. The Journal of Biochemistry. 2016.
※4 Intestinal barrier and gut microbiota: Shaping our immune responses throughout life. 2017.
※5 Secretory IgA’s Roles in Immunity and Mucosal Homeostasis. 2011.
※6 Complex regulatory effects of gut microbial short-chain fatty acids on immune and autoimmune diseases. 2023.
※7 Regulation of short-chain fatty acids in the immune system. 2023.
※8 Role of dietary fiber in promoting immune health—An emerging link. 2022.
※9 Gut-microbiota-targeted diets modulate human immune status. Cell. 2021.
※10 Probiotics for preventing acute upper respiratory tract infections. Cochrane Database of Systematic Reviews. 2022.
※11 Vitamin D supplementation to prevent acute respiratory infections: systematic review and meta-analysis. The Lancet Diabetes & Endocrinology. 2025.
免責事項
本記事は一般的な健康情報の提供を目的としており、医療行為・診断・治療の代替ではありません。高熱が続く、呼吸が苦しい、強い腹痛・血便・黒色便、体重減少、脱水などの症状がある場合は医療機関へ相談してください。持病がある方、妊娠中の方、薬を服用中の方、免疫抑制状態の方は、食事やサプリを大きく変える前に医師・薬剤師等の専門家へ相談してください。




