「食欲が自然に減って、体重が落ちる」──そんな夢のような薬として注目されているのが GLP-1受容体作動薬 です。
もともとは糖尿病治療薬として開発されましたが、近年ではダイエット目的での利用が世界的に広がっています。
しかし、「本当に痩せるの?」「副作用は大丈夫?」といった疑問を持つ方も多いはず。
この記事では、GLP-1受容体作動薬の仕組み・効果・副作用・使用の注意点を、科学的エビデンスに基づいて解説します。
1分でわかるGLP-1
- 作用機序:食欲抑制・胃の動きを遅らせる・血糖値上昇を防ぐ
- 効果:平均で体重の5〜15%の減量効果が臨床試験で確認済み
- 代表薬:注射薬(サクセンダ、ウゴービ、マンジャロ)、経口薬(リベルサス)
- 副作用:吐き気、便秘、下痢、まれに膵炎や胆石のリスク
- 注意点:必ず医師の処方が必要、生活習慣改善とセットで行うことが重要
GLP-1受容体作動薬とは?
GLP-1とは?
GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)は、食事をすると腸から分泌されるホルモンです。
- インスリン分泌を促進し血糖値を下げる
- 食欲を抑制する(満腹中枢に作用)
- 胃の動きを遅らせる(胃排出遅延)
薬としてのGLP-1受容体作動薬
このGLP-1の働きを人工的に高めるのが GLP-1受容体作動薬 です。
本来は2型糖尿病治療薬ですが、「体重減少作用」が副次的に強く現れることがわかり、近年はダイエット薬としても注目されています。
効果:どのくらい痩せるのか?
臨床試験の結果では:
- サクセンダ(リラグルチド):平均で体重の約5〜8%減少
- ウゴービ(セマグルチド):平均で約10〜15%減少
- マンジャロ(チルゼパチド):GLP-1とGIPの両方に作用し、最大20%以上の体重減少が報告される例も
👉 食欲を抑えるだけでなく、血糖コントロールや脂質代謝改善にも寄与します。
👉 欧米では肥満治療の「第一選択薬」として推奨されることが増えています。
副作用とリスク
GLP-1受容体作動薬は強力な効果を持つ一方で、副作用にも注意が必要です。
- よくある副作用:吐き気、便秘、下痢、腹部不快感(使用初期に多い)
- まれなリスク:膵炎、胆石、腎機能障害の悪化
- 禁忌:妊娠中・授乳中、膵炎の既往がある人、重度の胃腸障害がある人
👉 特に「食欲が落ちすぎて栄養不足になる」ケースもあり、医師の管理下での使用が必須です。
日本で使えるGLP-1薬の種類
- 注射薬
- サクセンダ(肥満治療薬として承認済み、日本では一部自費診療)
- ウゴービ(肥満症治療薬として承認済み、2024年より供給開始)
- ビクトーザ(糖尿病治療薬)
- マンジャロ(糖尿病治療薬、肥満治療への適応も進行中)
- 経口薬
- リベルサス(世界初の経口GLP-1製剤、日本でも承認済み)
👉 いずれも医師の処方が必要で、市販薬やサプリの形では存在しません。
生活習慣改善との併用がカギ
GLP-1薬は強力な体重減少効果がありますが、薬だけに頼るのは危険です。
- 食事の質改善(タンパク質・野菜中心、過剰カロリー制限を避ける)
- 運動習慣(有酸素運動+筋トレ)
- 睡眠・ストレス管理
👉 これらを組み合わせることで「リバウンド防止」「副作用の軽減」にもつながります。
詳しいまとめ
- GLP-1受容体作動薬は「食欲を自然に抑える」ことで減量をサポートする、近年もっとも注目される医療ダイエット薬。
- 効果は強力で、平均5〜15%の体重減少が臨床的に確認されている。
- 副作用として消化器症状が多く、まれに重篤な合併症もあるため、自己判断での使用は危険。
- 日本ではウゴービやリベルサスなどが承認され、今後さらに利用が広がる見込み。
- あくまで「生活習慣改善と併用してこそ真価を発揮する薬」であり、長期的な健康のためには根本的な生活改善が欠かせない。
参考文献
※1:Wilding JPH, et al. “Once-Weekly Semaglutide in Adults with Overweight or Obesity.” N Engl J Med. 2021.
※2:Jastreboff AM, et al. “Tirzepatide Once Weekly for the Treatment of Obesity.” N Engl J Med. 2022.
※3:厚生労働省 医薬品医療機器総合機構(PMDA)「医薬品添付文書」
※4:日本糖尿病学会「GLP-1受容体作動薬の適正使用指針」