「飲むだけで痩せる薬があるらしい」「糖を尿に出す薬って本当にダイエットに効くの?」
そんな話題の中心にあるのが、**SGLT2阻害薬(ナトリウム-グルコース共輸送体2阻害薬)**です。
本来は糖尿病の治療薬として開発されたものですが、近年では「体重減少」や「心臓・腎臓の保護効果」など、
ダイエット・アンチエイジング文脈でも注目を浴びています。
この記事では、理学療法士の視点から
SGLT2阻害薬の作用機序・代表的な薬剤の違い・ダイエットへの影響を、エビデンスに基づいてわかりやすく解説します。
60秒でわかるこの記事のポイント!
- SGLT2阻害薬は「糖を尿に出す」ことで血糖を下げる薬
- 代表薬はフォシーガ・ジャディアンス・カナグルなど
- 体重減少は平均2〜3kg程度(脂肪由来が中心)
- 心不全・腎臓保護にも有効で、メタボ改善効果も
- ダイエット目的での使用は医師の管理下でのみ推奨
🧠 SGLT2阻害薬とは?基本の仕組み
腎臓には、血液中の不要な老廃物を尿に排泄する機能がありますが、ブドウ糖は「再吸収」されて体に戻されます。
この再吸収を担うのが「SGLT(ナトリウム-グルコース共輸送体)」というたんぱく質です。
🧩 SGLT2阻害薬の作用機序
SGLT2阻害薬は、この「SGLT2」をブロックしてブドウ糖の再吸収を抑え、尿として排出させることで血糖を下げます。
結果として:
- 尿中に1日あたり50〜70gの糖を排泄(約200〜280kcal相当)
- 血糖値の低下(インスリン非依存的)
- 体重減少(平均2〜3kg)
- 血圧低下(ナトリウム排泄による)
という効果が得られます。
⚙️ どんな人に向いているのか?
| タイプ | SGLT2阻害薬が向いている理由 |
|---|---|
| 内臓脂肪型の肥満 | インスリン抵抗性を改善し、脂肪燃焼を促す |
| 生活習慣病リスクが高い人 | 血糖・血圧・体重を同時に改善 |
| 心不全・腎機能が気になる人 | 心腎保護作用のエビデンスが豊富 |
| ダイエットで停滞している人 | 糖排泄による“カロリー逃がし効果”がある |
💊 日本で使われている主なSGLT2阻害薬一覧
| 一般名(成分名) | 商品名 | 製薬会社 | 特徴・備考 |
|---|---|---|---|
| ダパグリフロジン | フォシーガ(Forxiga) | アストラゼネカ | 最初に登場した代表格。心不全・慢性腎臓病の適応もあり。 |
| エンパグリフロジン | ジャディアンス(Jardiance) | ベーリンガーインゲルハイム/イーライリリー | 心血管保護・死亡率低減エビデンスが最も豊富。 |
| カナグリフロジン | カナグル(Canaglu) | 田辺三菱製薬/J&J | SGLT1も部分的に阻害(腸で糖吸収も抑制)。腎保護作用に強み。 |
| イプラグリフロジン | スーグラ(Suglat) | アステラス製薬 | 日本初の国産SGLT2阻害薬。作用マイルド。 |
| ルセオグリフロジン | ルセフィ(Lusefi) | 住友ファーマ | 肝代謝型で腎機能低下例にも比較的安全。 |
| トホグリフロジン | デベルザ/アプルウェイ | 田辺三菱製薬 | 日本開発。1日1回服用。 |
| ソタグリフロジン | ソトグリフロジン(Sotagliflozin) | Sanofi/Lexicon(海外) | SGLT1/2両方阻害の“デュアルタイプ”。日本未承認。 |
目的による分類
| 目的 | 向いている薬剤 |
|---|---|
| ダイエット寄り | フォシーガ、ジャディアンス、カナグル |
| 心不全・腎保護重視 | ジャディアンス、フォシーガ、カナグル |
| 副作用を抑えたい(マイルド) | スーグラ、ルセフィ、デベルザ |
🧬 各薬剤の特徴をダイエット視点で比較
フォシーガ(ダパグリフロジン)
- 血糖・体重・血圧すべてをバランス良く下げる
- 心不全や腎臓疾患にも使える
- 体重減少効果が安定(2〜3kg)
→ 総合的なダイエットサポート薬
ジャディアンス(エンパグリフロジン)
- エビデンス最強。死亡率・心不全リスクを下げる臨床試験多数
- 脂肪燃焼促進作用が強い
→ 心臓にも脂肪にも優しい“万能型”
カナグル(カナグリフロジン)
- SGLT1も阻害するため、腸からの糖吸収もカット
- 食後血糖・脂肪肝にも効果
→ 食事由来の糖をブロックしたい人におすすめ

スーグラ・ルセフィ・デベルザ
- 日本製で作用がマイルド
- 体重減少効果はやや控えめ(〜2kg)
→ 副作用リスクを抑えたい人向け
🩸 ダイエット効果のエビデンス
複数のメタアナリシス(※1,2)によると、
SGLT2阻害薬使用者の体重は平均−2.5〜−3.0kg減少。
特に脂肪量が減る傾向が強く、筋肉量の低下は軽度にとどまると報告されています。
一方で、糖が尿から出るため“軽度の脱水・電解質変化”が起こることもあり、
医師管理下での使用が前提です。
⚠️ 副作用と注意点
| 主な副作用 | 内容 |
|---|---|
| 尿路・性器感染症 | 糖が尿に出るため細菌繁殖しやすくなる |
| 脱水・低血圧 | 利尿作用で水分・ナトリウムも排出される |
| ケトアシドーシス | インスリン不足・極端な糖質制限と併用でリスク上昇 |
| 体臭変化 | アセトン臭(脂肪燃焼の副産物)を感じることも |
特にケトジェニックダイエットとの併用は危険なので注意が必要です。
💡 ダイエットでの使い方(※医師管理下限定)
SGLT2阻害薬はあくまで糖尿病治療薬です。
しかし、医師の判断で「肥満合併糖尿病」などの場合に処方されることがあります。
一方で「美容目的・自己判断での服用」は推奨されません。
体重が落ちても「尿糖によるカロリー損失」であって、
根本的な代謝改善ではないからです。
理想は「運動+食事改善+薬のサポート」
特にSGLT2は脂肪燃焼を“後押し”する立ち位置として考えるのが現実的です。
まとめ|SGLT2阻害薬は“痩せ薬”ではなく“代謝サポート薬”
| 観点 | メリット | 注意点 |
|---|---|---|
| 血糖 | 尿糖排泄で血糖低下 | 糖質制限併用で低血糖リスク |
| 体重 | −2〜3kg(主に脂肪減少) | 過信は禁物 |
| 心臓・腎臓 | 保護エビデンス豊富 | 利尿作用で脱水注意 |
| 総評 | “代謝リセット”を助ける薬 | 医師管理下でのみ安全に |

参考文献
※1:Zelniker TA et al. SGLT2 inhibitors for primary and secondary prevention of cardiovascular and renal outcomes in type 2 diabetes. Lancet. 2019.
※2:Neal B et al. Canagliflozin and Cardiovascular and Renal Events in Type 2 Diabetes. N Engl J Med. 2017.
※3:Yabe D et al. Long-term safety and efficacy of dapagliflozin in Japanese patients with type 2 diabetes mellitus. Diabetes Obes Metab. 2014.
※4:Fitchett D et al. Empagliflozin reduces mortality in patients with type 2 diabetes at high cardiovascular risk. Eur Heart J. 2015.
免責事項
本記事は医薬品情報および研究データをもとに作成していますが、
医療行為・処方の推奨を目的としたものではありません。
実際の服用・処方は必ず医師または薬剤師にご相談ください。
ダイエット目的での使用は、医学的監督のもとでのみ行ってください。




