「なぜ世界の一流アスリートは、小麦を避けるのか?」
サッカー界のレジェンドであるクリスティアーノ・ロナウド、テニス界の四天王の一人ノバク・ジョコビッチ──彼らに共通する食事戦略のひとつが、“パン・パスタ・ピザなどの小麦食品をほとんど食べない”ということです。また、我らが日本人の誇りであるMLBの大谷翔平もグルテンフリーの生活をしているという噂があります。
でも疑問がありますよね。
グルテンってそんなに悪いの?
小麦をやめると本当に体調が良くなるの?
ただの流行?科学的な根拠はある?
この記事では、グルテンの基礎から健康への影響、さらにトップアスリートの戦略まで、科学的にわかりやすく整理していきます。
60秒でわかるこの記事の結論
✅ グルテンは“全員にとって悪い”ものではない
✅ でも 体質によっては腸・炎症・疲労の原因になる
✅ 特に 小麦を食べると眠くなる・だるくなる・お腹が張る人は注意
✅ グルテン過敏症は検査で出ない「隠れ不調」の原因になりやすい
✅ 大谷翔平・C.ロナウドはパフォーマンス低下を防ぐために小麦を制限
✅ いきなり完全除去は不要。まずは菓子パン・ラーメンを減らすだけでOK
✅ 迷ったら2週間のグルテン軽減テストで体調が激変することも
グルテンは小麦に含まれるタンパク質の一種ですが、近年は「太る」「腸に悪い」「炎症を起こす」など賛否が分かれる食品の筆頭。まずは正しい知識を整理しましょう。
グルテンとは何か?まずは事実を整理
グルテンは小麦に含まれるタンパク質で、グリアジンとグルテニンという2つの成分が絡んでできています。パンのモチっとした食感や、麺のコシを生むのはこのグルテンのおかげです。
よく誤解されますが、
❌ グルテン=添加物や化学物質
これは間違いです。グルテンは自然由来の成分です。
ただし問題は、「現代人がグルテンを摂りすぎている」ということ。パン・パスタ・ラーメン・揚げ物・たこ焼き・クッキー・カレーのルウ…現代の食生活の多くは“気づかぬ小麦まみれ”。これが体調を乱す原因になっている人がいます。
なぜ「グルテンは悪」と言われるのか?
グルテンはアレルギーや自己免疫反応を引き起こすことがあり、特に次の3つのケースは医学的に問題とされています。
| 分類 | どんな人? | 症状 |
|---|---|---|
| 小麦アレルギー | アレルギー体質 | じんましん・呼吸困難 |
| セリアック病 | 遺伝的自己免疫疾患 | 栄養吸収障害・下痢 |
| 非セリアックグルテン過敏症(NCGS) | 検査では異常なし | 倦怠感・腹部膨満・頭痛・脳の霧 |
特に3番目の**グルテン過敏症(NCGS)**はやっかいで、血液検査やアレルギー検査では“異常なし”と出るため、原因不明の不調の正体になりやすいとされています。
さらにグルテンには腸の細胞の結合をゆるめる性質があり、**腸のバリア機能が低下する(リーキーガット)**という仮説もあります。これは研究が進行中のテーマですが、慢性疲労・肌荒れ・頭痛・免疫低下との関係も報告されています。
血糖値の乱高下 → 太りやすい体になる
もう1つ重要な論点は太りやすさとの関係。小麦食品の多くはGI値が高く、血糖が急上昇しやすい特徴があります。その結果──
- インスリンが大量に分泌され脂肪がたまりやすい
- 血糖値が乱降下して食欲が暴走
- パンやスイーツがやめられない
こうして**「小麦中毒」のような状態**になる人もいます。
なぜ一流アスリートは小麦を避けるのか?
結論から言うと、小麦を避ける目的は「ダイエットのため」ではありません。
“コンディション管理とパフォーマンス維持”のためです。
トップアスリートは「何を食べるか」ではなく**「何を避けるか」を徹底します。
その中でも避けられやすい食品の代表格が、小麦製品・乳製品・砂糖・揚げ物など。
理由はシンプルで、これらは炎症・疲労・消化負担**の原因になりやすいからです。
大谷翔平が小麦を避ける理由
大谷翔平については「グルテンと卵が体に合わない」という噂がネットに出回っていますが、公式な情報ではありません。そもそも2023年のWBCの際には「塩パスタ」を食べていることをチームメイトに指摘されていました。また、日清製粉Welnaというザ・グルテン会社のCMにも抜擢されていることからグルテンフリーの食事生活は真実ではないのかもしれません。

しかし、大谷が食事において厳格な体調管理を行っているのは事実で、以下の理由から小麦を制限している可能性は高いと考えられます。
✅ 理由1:血糖値を安定させるため
大谷の食事は基本的に高タンパク・低GI・クリーン食。これは血糖の乱高下による集中力低下やパフォーマンス低下を避ける戦略と一致します。
✅ 理由2:慢性炎症を抑えるため
投手・打者の二刀流は身体の負担と炎症リスクが他の選手より圧倒的に高い。
小麦は人によって腸の炎症を引き起こすことがあり、これを避けるのは極めて合理的です。
✅ 理由3:腸内環境を整える重要性を理解している
大谷はシーズン中でも発酵食品や食物繊維を重視していることが知られています。
この食事戦略も腸のパフォーマンス=免疫と疲労管理を重視している現代スポーツ栄養学と完全に一致します。
クリスティアーノ・ロナウドが小麦を避ける理由
ロナウドは公言しています。
「僕の体は仕事道具だ。最高の状態を維持するために不必要なものは食べない。」
彼の食事スタイルは低炎症・高栄養密度の超合理主義。その中で小麦製品がほとんど出てきません。
✅ ロナウドが小麦を避ける背景
- パン・パスタよりオートミールや玄米を選ぶ
- 食後の眠気を嫌い血糖値の安定を重視
- 炎症を減らすために加工食品を制限
- 体のキレを落とす浮腫(むくみ)を嫌う
ロナウドのパフォーマンスはアラフォーになった現在でも衰えにくいことが知られていますが、食事のクリーンさがその支えになっていると評価されています。
ノバク・ジョコビッチがグルテンを避ける理由
ジョコビッチは著書『Serve to Win(ジョコビッチの生まれ変わる食事)』で公言しています。
「グルテンをやめた瞬間、僕の人生は変わった。頭は冴え、体は軽く、試合で最後まで走れるようになった。」
彼は世界ランク1位に返り咲く過程で徹底したグルテンフリー戦略を導入。パン・パスタ・ピザといった小麦製品を完全にカットしました。
✅ ジョコビッチがグルテンを避ける背景
- 慢性的な疲労・集中力低下の原因と判明
- 食後に頭が重くなる「ブレインフォグ」に悩まされていた
- パフォーマンスの波をなくすために原因を追求
- 食物過敏テストでグルテン不耐性が発覚
- 小麦に含まれるたんぱく質「グルテン」で消化・免疫が負担
- 腸の炎症が疲労と免疫低下につながっていた
- 呼吸機能と持久力の改善につながった
- グルテン除去後にアレルギー症状が軽減
- コートでのスタミナ切れが激減
- 体のむくみ・倦怠感が消えた
- 炎症による体重増加やむくみが改善
- 体のキレと可動性が向上
ジョコビッチは競技レベルの最前線で戦うため、腸内環境と免疫ケアを最優先に設計した食事を実践。グルテンフリーは彼のパフォーマンス戦略の中核です。
グルテンは腸・脳・体脂肪にどう影響するのか?
ここまでで「一流アスリートがグルテンを避ける理由」は見えてきましたが、それは決して特別な人だけの話ではありません。
むしろ、多くの人が気づかないうちに小麦によるコンディション低下を経験しています。
では、体のどこに影響するのか。ポイントは次の3つです。
① 腸への影響:お腹が張る・下痢・便秘・ガス
グルテンは人によっては腸で分解されにくく、消化に負担がかかることがあります。
特に、日本人のように米文化を長く持つ民族は小麦酵素が少なく、消化が苦手な人が一定数います。
さらに、グルテンの一部であるグリアジンは腸の粘膜バリアを弱め、腸の炎症やリーキーガットのリスクを高めることが報告されています。
✅ こんな人は要注意
・パンやパスタを食べるとお腹が張る
・便秘と下痢を繰り返す
・食後に強い眠気が来る
・肌荒れやニキビが改善しにくい
② 脳への影響:集中力低下・だるさ・メンタル不調
「パンやラーメンを食べると、その後ぼーっとする」「午後の眠気がひどい」
それ、血糖値だけの問題じゃないかもしれません。
グルテンの一部は分解が不完全だとエクソルフィンという物質に変わります。これは脳の報酬系に作用して、中毒性に似た“もっと食べたくなる”状態を生むことがあります。
→ その結果
✅ 食欲コントロールが効かない
✅ だるさ・倦怠感
✅ 頭のモヤ(ブレインフォグ)
✅ イライラしやすい
こういった“なんとなくの不調”につながります。
③ 体脂肪への影響:「グルテン=太る」は半分本当
グルテンには直接的に太る要素はありませんが、太りやすい生活習慣を作る要因になりやすい食品に含まれています。
パン、ラーメン、パスタ、ピザ、スナック菓子…。これらは血糖を乱しやすく、脂質と糖が同時に多い「太る食べ物」の典型。
さらに、小麦+砂糖+脂質の組み合わせは、ドーパミンを刺激して依存を招くことがわかっています。
✅ つまり──
「グルテンは全員に悪ではないけれど、小麦製品中心の食生活は太りやすく、疲れやすい体を作る」
グルテンが合わない人のチェックリスト
「自分はグルテンに問題ない」と思っていても、実は慢性的な不調の原因になっているケースはよくあります。
特に**非セリアック性グルテン過敏症(NCGS)**は検査で異常が出ないため、気づきにくい隠れトラブルです。
次の中に3つ以上当てはまる人は、グルテンの影響を受けている可能性があります。
✅ 体の症状チェック
- 食後にお腹が張る(ガスがたまる感じ)
- 便秘や下痢を繰り返す
- 常に疲れている(慢性疲労)
- 肌荒れ・ニキビがなかなか治らない
- 謎の関節痛・筋肉のこわばりがある
- 朝起きたときにむくみやすい
✅ 脳・メンタルのチェック
- 集中力が続かない
- なんとなく頭がぼんやりする(ブレインフォグ)
- イライラしやすくなる時がある
- 食後の眠気が強い
- 甘いもの・パン・ラーメンが無性に欲しくなる
✅ ダイエット視点のチェック
- 食事に気を使っているのに痩せにくい
- 炭水化物を食べると異常に食欲が増す
- 夜に間食・暴食が止められない
- 低GIを意識してるのに太る
✅ 特に「消化不良+疲れやすさ+食欲の乱れ」が3点セットである人は、グルテン過敏の可能性大。
じゃあ小麦はやめた方がいいの?
結論:いきなり完全にやめる必要はありません。
むしろ、いきなりゼロにするのはストレスで挫折したり、逆に「小麦への執着」を生むこともあります。
大事なのは、「やめること」よりもコントロールすること。
今日からできるグルテンの減らし方(実践)
まずは1日3食の中の**“小麦の回数”を意識**してください。
| レベル | 例 | コメント |
|---|---|---|
| ❌ 小麦まみれ | 朝:菓子パン 昼:パスタ 夜:ラーメン | 最悪パターン |
| △ 減らしたい | 朝:トースト 昼:うどん 夜:ご飯+揚げ物 | もう一歩 |
| ◎ 理想 | 朝:オートミール 昼:米+肉 夜:魚+野菜 | 体調が改善しやすい |
2週間だけ試そう「グルテン軽減テスト」
完全除去ではなく“軽く減らすだけ”の方法です。
✅ やめるのはこの2つだけでOK
- 菓子パン
- ラーメン
✅ 代わりにこれを食べる
- 主食は「米・玄米・オートミール・蕎麦」にチェンジ
- おやつは「ナッツ・ヨーグルト・ダークチョコ」に変更
- パンはどうしても食べたければ全粒粉パン or 米粉パンに置き換え
たった2週間でも、むくみが取れる・疲れにくくなる・集中力が増すなどの変化を感じる人が非常に多い。
まとめ:グルテンは悪ではない。しかし合わない人は確実にいる
グルテンは「毒」でも「完全悪」でもありません。しかし、確実にこう言えます。
✅ グルテンは“合う人・合わない人がハッキリ分かれる食品”。
大谷翔平やクリスティアーノ・ロナウドが小麦を避けるのは、流行ではなく合理的なパフォーマンス戦略です。
それは私たち一般人にも関係があります。なぜなら、疲れやすさ・集中力低下・消化不良・食欲の乱れなど、誰にでも起き得るものだからです。
小麦と賢く付き合うための結論(実践ガイド)
✅ いきなり「ゼロにしない」
✅ まずは菓子パン・ラーメンをやめるだけで体調は変わる
✅ 主食は米・玄米・オートミール・蕎麦を軸に
✅ パンをどうしても食べたい日は全粒粉 or 米粉パンにする
✅ 2週間のグルテン軽減テストで体調の変化を確認
✅ 腸の調子が悪い人は同時に発酵食品・食物繊維も増やす
グルテンは悪ではない。
でもあなたの体に合っているかどうか、一度確かめる価値はある。
参考文献
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- Catassi C, et al. Non-Celiac Gluten Sensitivity: The New Frontier of Gluten Related Disorders. Nutrients. 2013.
- Sapone A, et al. Spectrum of gluten-related disorders: consensus on new nomenclature and classification. BMC Medicine. 2012.
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- Brouns F, et al. Is Gluten Bad for Your Health? Nutrition Research Reviews. 2018.
- Vici G, et al. Gluten free diet and nutrient deficiencies: A review. Clinical Nutrition. 2016.
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- Choung RS, Murray JA. The Spectrum of Gluten-Related Disorders. Gastroenterology. 2016.
- Jackson JR, et al. Gluten sensitivity: disease or not? World Journal of Gastroenterology. 2012.
- Mansueto P, et al. Non-celiac wheat sensitivity: A search for the pathogenesis of a self-reported condition. World Journal of Gastroenterology. 2015.
免責事項
本記事は最新の研究論文や公的医療情報をもとに作成していますが、医療行為や診断を目的としたものではありません。
体調不良が続く場合や消化器症状が強い場合は、必ず医師・医療機関を受診してください。
また、自己判断による極端な食事制限は栄養バランスを崩す恐れがあります。食事改善は無理のない範囲で段階的に行うことを推奨します。




