「たんぱく質をたくさん摂れば、筋肉もつくし、脂肪も落ちる」──そんな話を聞いたことがあるはず。
確かに、近年「高タンパク質ダイエット(high-protein diet)」は注目を集めています。
しかし、「たんぱく質さえ増やせば痩せる・健康になる」という考えはもはや古い常識。
実際には、「どれだけ」「どの種類を」「どのタイミングで」摂るかが鍵です。
本記事では、最新の研究をもとに、高タンパク食がもたらす科学的効果と注意点を解説します。
60秒でわかるこの記事のポイント!
- 高タンパク食は満腹感を高め、脂肪減少に効果あり(※1)
- 筋肉維持・増量を両立するには「体重×1.6〜2.0g/日」が目安
- 「量」だけでなく「質」と「タイミング」が重要
- 動物性中心・繊維不足の高タンパクはリスクあり(※2)
- 成功のカギは「量+質+タイミング」の三本柱
なぜ「高タンパク質」が体に効くのか?
① 満腹感とホルモン作用
たんぱく質摂取は腸内ホルモン(GLP-1、PYY、CCKなど)を刺激し、食欲を自然に抑える効果が確認されています。
その結果、カロリー摂取量が下がり、体脂肪が減少する傾向にあります(※1)。
「食べない努力」ではなく「自然に食べたくなくなる」。
これが高タンパク質ダイエットの最大の強みです。
② 筋肉を守り、代謝を維持する
減量中は筋肉量の低下(=基礎代謝の低下)が起こりやすいですが、
高タンパク質食はこの“代謝低下”を防ぎます。
Rutgers大学の研究では、
「高タンパク食+運動」で減量中でも筋肉を維持し、代謝を保てた
という結果が報告されています(※3)。
特に筋トレや有酸素運動と組み合わせることで、体脂肪だけを落としやすい体質へ。
③ 代謝を上げる「燃える栄養素」
たんぱく質は消化・吸収時に多くのエネルギーを消費します。
これは「食事誘発性熱産生(DIT)」と呼ばれ、
炭水化物や脂質に比べて消費カロリーが約2倍。
つまり、同じカロリーを摂っても「高タンパク質食の方が太りにくい」のです。
高タンパク食にも“落とし穴”がある
① 「量だけ増やす」は逆効果
動物性たんぱく質に偏り、食物繊維やビタミンを減らすような食事は、
腸内環境を悪化させ、心血管疾患リスクを上げる可能性があると報告されています(※4)。
また、たんぱく質過多は一部の人では腎機能に負担をかけるため、
腎疾患・糖尿病などを持つ人は注意が必要です。
② 「高タンパク=何でもOK」は古い理論
かつて流行した「肉・卵・チーズだけ食べる」ダイエットは、
短期的には体重が落ちても、長期的には代謝低下やホルモンバランスの乱れを起こす可能性があります。
現代の科学は、「量よりも質とタイミング」を重視しています。
筋肉合成・脂肪燃焼を最大化するには、植物性+動物性のバランスが不可欠です。
理想的なたんぱく質摂取の目安
1日の摂取量
- 一般成人:体重×1.2〜1.6g/日
- 筋トレ・減量期:体重×1.6〜2.0g/日
(例:体重60kg → 100〜120g/日)
食材の選び方
おすすめ: 鶏むね肉・魚・卵・大豆・納豆・ギリシャヨーグルト
控えたい: 加工肉・脂質の多い肉・揚げ物・プロテイン過剰摂取
「たんぱく質を確保したいから他を削る」はNG。
炭水化物・脂質・ビタミン・ミネラルも必ずセットで。
摂取タイミング
- 朝食:断食明けの補給
- トレーニング後:筋合成スイッチON
- 夜:ゆっくり吸収されるカゼイン・大豆製品がおすすめ
1日3〜4回に分けてバランスよく摂れば十分。
小刻みな食事回数でなくても、総量が確保できれば筋肉は落ちません。
🧾 まとめ:高タンパク質は「量より質とバランス」
- 高タンパク質は「脂肪を落とし、筋肉を守る」強力な戦略
- ただし「肉を増やすだけ」では代謝は上がらない
- 適切な量・タイミング・栄養バランスがあってこそ機能する
- 「古い常識=とにかくタンパク質を増やす」から卒業を
💡 “たんぱく質は武器になるが、使い方を間違えると毒になる。”
科学的に設計された高タンパク戦略が、最強のダイエット法です。
その他の食事法についての科学的研究はこちら

参考文献
※1 Reynolds A, et al. J Obes Metab Syndr. 2020.
※2 Mayo Clinic. High Protein Diets and Risks. 2023.
※3 Rutgers University. High-Protein Intake and Healthy Eating. 2022.
※4 Hisayama Study Group. Am J Clin Nutr. 2021.
※5 Morton RW, et al. Br J Sports Med. 2018.
免責事項
本記事は最新の研究データをもとに作成していますが、医療行為・診断・治療を目的とするものではありません。
たんぱく質摂取量・食事内容は個人差があります。
健康状態や既往歴に応じて、医師・管理栄養士・トレーナーなど専門家にご相談ください。




