糖分を摂りすぎると逆に疲労になる理由|“甘い誘惑”が疲れを生む科学的メカニズム

「疲れたときは甘いもの!」
そう思ってチョコやジュースを口にする人は多いですよね。
しかし、実は糖分の摂りすぎこそが“慢性的な疲労”の原因になっていることをご存じでしょうか?

本記事では、科学的根拠に基づいて
「なぜ糖が疲労を生むのか?」
「疲れにくくするためにはどうすればいいのか?」を解説します。


目次

60秒でわかるこの記事のポイント!

  • 糖を摂りすぎると**血糖値の乱高下(スパイク)**で一時的な疲労が起こる
  • ミトコンドリアの酸化ストレスが増え、エネルギー効率が落ちる
  • ビタミンB群・マグネシウムを大量消費して代謝が疲れる
  • 腸内環境が悪化し、メンタルや免疫にも影響
  • 継続的な糖過多はインスリン抵抗性を進め、慢性的疲労に

第1章:血糖値スパイクが「だるさ」を生む

糖を多く摂ると血糖値が急上昇します。
それに対して体は、膵臓からインスリンを大量に分泌して血糖を下げようとします。

しかし、この反応が強すぎると、今度は血糖値が急降下
これを「血糖クラッシュ」と呼び、脳がエネルギー不足と錯覚して眠気・倦怠感・集中力の低下を引き起こします(※1)。

💬【用語メモ】
血糖スパイク:食後に血糖値が急上昇し、その後急降下する現象。
一見すると問題ないが、実は動脈硬化や糖尿病のリスク因子にも。

このジェットコースター血糖が頻発すると、アドレナリンやコルチゾールといったストレスホルモンが分泌され、疲労感が増す悪循環に。


第2章:ミトコンドリアが酸化してエネルギー不足に

エネルギーを生み出す細胞内器官「ミトコンドリア」は、糖を代謝してATP(エネルギー)を作ります。
しかし糖の供給が過剰になると、代謝過程で**活性酸素(ROS)**が増え、ミトコンドリアがダメージを受けます(※2)。

💡【用語メモ:活性酸素(Reactive Oxygen Species; ROS)】
活性酸素とは、酸素が体内で代謝される過程で生じる“酸化力の強い分子”の総称です。
少量であれば免疫や細胞修復に役立ちますが、過剰に発生するとタンパク質・脂質・DNAを傷つけ、細胞機能を低下させます。
特に糖の代謝が過剰なときやストレス・紫外線・睡眠不足時に増えやすく、ミトコンドリアの疲弊や老化促進の一因になります。

結果、

  • エネルギー産生効率が低下
  • 細胞レベルで“燃え尽き”状態
  • 脳・筋肉・神経の働きが鈍化

⚙️ エネルギー源であるはずの糖が、エネルギー産生を妨げる――これが「糖疲労」の本質です。


第3章:糖代謝でビタミンB群とミネラルが枯渇する

糖をエネルギーに変えるには、次の補酵素が不可欠です。

栄養素役割不足時の症状
ビタミンB1糖をエネルギー化倦怠感・頭が重い
ビタミンB2脂質・糖の代謝補助口内炎・疲れやすい
ビタミンB3(ナイアシン)NAD生成に関与めまい・倦怠感
ビタミンB6神経伝達・代謝補助イライラ・集中力低下
マグネシウムエネルギー反応の触媒筋肉疲労・不眠

糖質過多の食生活では、これらの栄養素が大量に消費されるため、
ビタミン欠乏 → 代謝低下 → 疲労感増大という連鎖が起こります(※3)。


第4章:腸内環境とメンタル疲労の関係

糖分は「悪玉菌」や「カンジダ菌」のエサになり、腸内フローラのバランスを崩します。
腸内環境が悪化すると、炎症性サイトカインが増え、脳や免疫に悪影響を及ぼします。

さらに腸で作られる**セロトニン(幸せホルモン)**が減少し、
「なんとなく気分が重い」「やる気が出ない」といったメンタル疲労にもつながります(※4)。


第5章:慢性的な糖過多が“エネルギーが使えない体”をつくる

甘いものを日常的に摂りすぎると、細胞がインスリンの指令に反応しにくくなります。
これを「インスリン抵抗性」と呼び、糖がうまく細胞に取り込まれなくなる状態です。

すると、血液中に糖が余っているのにエネルギーが作れないという“ paradox(矛盾)状態 ”に陥り、
常にエネルギー不足・だるい・眠いという慢性疲労体質になります(※5)。


まとめ:糖は「瞬発力」にはなるが「持久力」は奪う

糖分は一時的な元気をくれるが、長期的にはエネルギーシステムを乱します。
特に現代人は、清涼飲料水・菓子パン・カフェドリンクなどから無意識に大量の糖を摂取しているため、
“隠れ糖疲労”が非常に多いのが現実です。

糖疲労を防ぐポイント

  • 精製糖ではなく**低GI食品(玄米・果物・オートミール)**を選ぶ
  • 糖を摂るならたんぱく質・脂質・食物繊維と一緒に
  • ビタミンB群とマグネシウムを意識的に補う
  • 甘いものを「疲労回復」ではなく「嗜好品」として捉える

参考文献

※1:J Am Coll Cardiol. 2017;70(7):883–893.
※2:Free Radic Biol Med. 2019;134:226–233.
※3:Nutrients. 2020;12(11):3370.
※4:Front Immunol. 2021;12:671036.
※5:Cell Metab. 2016;23(1):101–112.


免責事項

本記事は一般的な健康情報の提供を目的としています。
医療行為や診断を代替するものではありません。体調に不安がある場合は、医師・管理栄養士などの専門家にご相談ください。

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